トラウマセラピー EMDR:トラウマを癒す新しいセラピーの効果と実践法
(文責 yukicpp)
EMDRとは
EMDRはEye Movement Desensitization and Reprocessingの略です。日本語にすると、(1)眼球運動による(2)脱感作および(3)再処理法です。
アメリカの臨床心理士、フランシーン・シャピロ博士によって発表された比較的新しいトラウマやPTSDの治療法です。
クライエント(患者)はトラウマの体験の元になった過去の記憶を思い出しながら、セラピスト(心理カウンセラー)の指を見ながら左右に眼球を動かします。ここが(1)眼球運動と書かれている部分です。実際には眼球運動だけではなく、左右の手へのタッピングや音刺激など、右に左に動く刺激を身体に与える場合もあります。EMDRの過程では、トラウマに関連した別の記憶が呼び起こされることが多く、そこに焦点を当てながら再び眼球を左右に動かしていきます。この作業を繰り返すうちにトラウマ記憶が(2)脱感作されます。脱感作とは、不安が察知できないように変化していくことです。更に、記憶に対して新たな理解や意味づけをともなう「適応的情報処理」と呼ばれるプロセスを経て、普通の記憶の一つへと変化していくと考えられています。これが(3)再処理と呼ばれているところです。
トラウマやPTSDのような、心の処理能力を超えるほどの強い記憶の場合は経験は苦痛をともなったまま冷凍保存されたままです。しかし、EMDRを用いると、冷凍保存をされて固まっていた否定的な記憶が溶かされ活性化し、その人の中の肯定的な記憶や情報と結びつくことにより、自然な情報処理が促進されていきます。この過程が適応的情報処理といいます。
EMDRの治療は、「過去」の体験に対してだけでなく、「現在」「未来」におよびます。
たとえば、小学校のとき人前で笑われた過去があったらそれを扱います。次に今人前で話すのが苦手な事例を扱い、将来的に会社で人前でプレゼンテーションする場面が想定されたら、それを扱います。
実際にはNHKで紹介されている動画を見ていただけると想像ができるかと思います。NHK「トラウマからの解放」などで検索してみてください。
どんな人ができるのか やるべきなのか やらないほうがいい人
今のあなたが、状況や環境が安全の確保がされていない時にはEMDRは先送りした方が良いでしょう。例えば、今いじめを受けている人、ハラスメント、DV被害や虐待被害を受けている人は、まずは、安全を確保することが優先されるべきです。また、トラウマを受けた直後、災害、被災直後も控える方が良いでしょう。裁判中の方は、そのプロセス自体がトラウマを受け続ける思い出させることになっており心の安全が確保できないので一般的にはやらないほうがいよいとされています。状況が落ち着き、ひと段落させることを優先させます。この安全を確保させる方法は別の心理療法がありますからご相談ください。
EMDRをすべきかどうか
EMDRをしたいといって来談される方は多いのですが、EMDRはあくまでもトラウマ治療となります。クライエントさんがトラウマだと思って語られていることが、パニック発作や不安障害の予期不安だった事例もありました。予期不安とは、未来を(ネガティブに)予期して不安になることです。また、PTSDのフラッシュバックであると語られていることが、正常なネガティブな感情の表出であった事例もありました。
すべての方にはおすすめしてませんし、EMDRではない方法でカウンセリングすることは少なくありません。
また、人間は例え、困難なことがあっても、自ら乗り越えられる力があります。どのようなトラウマかにもよりますが、EMDRなどの治療をせずとも、トラウマを被った人の大半は自然に回復すると言われています。
本件記事に関連し、トラウマ治療やメンタルケアの効果にご関心のある方はお気軽にご相談ください。(⇨「カウンセリングの無料相談」はこちら⇨「カウンセリングご利用方法」)