シリーズ「人生の主役はあなた」第3回 「本当の気持ちは、身体の方が分かっているとしたら?」

こんにちは。カウンセラーのアサコです。
前回の記事では、自分の「本当の気持ち」とつながるための方法の1つとして、「フォーカシング」をご紹介しました。
今回も、人生の主役である自分の気持を大切にして生きていくために、さらに「こころと身体のつながり」に目を向けていきたいと思います。
たとえば、朝から頭がぼんやりして働かない。
些細なことでイライラしてしまう。
夜しっかり寝ても、疲れがどうしても抜けない。
そんな日が続くとき、私たちは「これじゃ駄目だ」「気合いを入れないと」と、自分を責めてしまいがちではないでしょうか?
けれども、もしかすると――
それは、あなたの身体が「もう限界です」と、小さな声でノーを伝えてくれているのかもしれません。
身体の方が先に気づいている「ストレス」
カナダの医師ガボール・マテは、著書『身体がノーと言うとき(When the Body Says No)』の中で、自己免疫疾患や慢性関節リウマチ、がん、アルツハイマー病といった深刻な病を抱える多くの患者に、ある共通点があることに気づいたと述べています。
それは、「嫌だ」と言えないこと。
怒りや悲しみなどの感情を、心の奥深くにしまい込み、他人の期待や役割を優先して生きてきたこと。
心が気づいていなくても、身体はちゃんとわかっている。
そして静かに、けれど確かに「ノー」と伝えてくる。
著者のマテは、このように説明しています。
「心が気づいていないストレスを、身体が代わりに感じて、ノーと言ってくれているのだ」と。
私たちはときに、「いい人であろう」「期待に応えよう」と努力を重ねるあまり、本当は傷ついているのに気づかずかなかったり、気づかないように気持ちを抑え込んでしまうことがあります。
でも、身体は誤魔化せません。身体が先に“異変”としてサインを出してくるというのです。
だるさ、肩のこり、不眠、焦燥感、胃の違和感など――
それらはあなたを困らせる敵ではなく、今の生き方にどこか無理があることを、知らせてくれる大切なメッセンジャーなのかもしれません。
感じることで、あなたの力になる
「感情を感じすぎたら、前に進めないのでは」
「怒りや悲しみは、持たない方がいいのでは」
そんな声が心のどこかから聞こえてくるかもしれません。
でも、本当の意味で自分を大切にするということは、自分の内側にある「真の感情」に気づく勇気を持つことなのだと思います。
たとえば、「怒り」の感情であっても、それは誰かを責めるためのものではありません。
「これは私にとって、つらかった」「本当は嫌だった」と、自分の内側で静かに認めていくこと。
そうすることが、自分への労わりや癒しとなって、エネルギーの充足へとつながっていくことがあります。
人生の主役である「あなた」にとって必要なこと
他人の期待や役割に応えることも、大切な場合があるかもしれません。
でも、あなたの人生にとって、今本当に必要なことは何でしょうか?
身体はいつも、私たちに何かを伝えようとしています。
一旦立ち止まって、その声に、耳を傾けてみませんか?
身体との対話から、自分の生き方を見つめ直していくことは、あなたの人生に光をもたらすかもしれません。
次回は、身体と心をつなぐ神経系――ポリヴェーガル理論という視点から、
「なぜ私たちは安心できるとリラックスするのか?」
「なぜ不安が続くと心も身体も疲れ果ててしまうのか?」
このようなテーマを一緒に見ていきたいと思います。
<参考文献>
『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ (著)/伊藤はるみ (訳) 日本教文社刊