人生と向き合うシリーズ第4回「感情の居場所を用意する」
こんにちは。カウンセラーのアンシーです。
「人生は、思い通りにいかないものだ」
恐らく、皆様も一度はそのように思ったご経験があるのではないでしょうか。
思い通りにいかなかった時に、苦しい感情を抑え込んだり、逃げ出したくなったりすることは、よくあることだと思います。けれども、もし、その感情をより上手く受け止め、柔軟に対処できるようになるとしたら・・・今よりもっと、日々の暮らしに豊かさを感じられるかもしれません。
そこでご紹介したいのが、ラナ・ハリス氏の著書『相手は変えられないならば自分が変わればいい』で紹介されている方法です。ハリス氏は、感情について、「良い感情」・「悪い感情」ではなく、「心地よい感情」・「苦痛な感情」で語ることを勧めています。そして、「苦痛な感情」をうまく扱うための方法として、「NAME」というシンプルなアプローチを紹介しています。
「NAME」アプローチとは?
「NAME」とは、感情に気づき(Notice)、その感情の存在を承認し(Acknowledge)、その感情の居場所を作り(Make space)、最後に、視野を広げて考える(Expand)という4つのステップからなる方法です。
例えば、怒りや不安を感じたとき、その感情に「気づく」ことから始めます。感情を無視したり、抑え込むのではなく、ただ「今、こんな感情があるんだな」と認識してみます。そして、深く深呼吸をして意識を身体に移して、その感情が最も強く感じられる場所を探してみます。
その感情に「名前をつける」ことで、距離を取るようにします。「怒り」や「不安」といったシンプルな名前でかまいません。感情が「自分の全体」ではなく、「あくまでも一部で一時的なものである」と認識し、価値判断をつけないことが大切です。
「居場所を作る」段階では、その感情を抑え込まず、少しの間そこにいてもらうようにします。その感情が不快であっても、深呼吸をしながらその感情を包み込むイメージを持って居場所を用意できるように試みます。
最後に「視野を広げる」段階では、感情にスポットライトを当てていた照明を少し暗くして、自分の人生全体を照らすようにして俯瞰してみます。
私たちは感情だけではなく、他にも多くの側面を持つ存在です。その感情があったとしても、外の世界に目を向け、自分の価値観に基づいた行動を選択することが可能です。そこで、「今自分がしたいことは何か」と問いかけてみます。そして、そのことに向かって、今の自分にできることをほんの少しでもいいので手を着けて動いてみます。
人生を豊かにする一歩
この「NAME」のアプローチを日常で少しずつ練習していくと、感情に振り回されず、冷静で豊かな視点をもてるように変化していくことが期待できます。それができるようになれば、人生をより豊かに感じられる土台が築かれていくことになって、日々の幸福感が増していくのではないでしょうか。
慣れるまでは難しさも感じるかもしれませんが、少しでも興味をもっていただけた方には、まずは数分間、呼吸を整えながら感情に向き合ってみることから始めることをお勧めします。
このアプローチは、しばらくは他の人にガイドをしてもらいながら取り組んでいく方が、身に着き易いかもしれません。「こころ相談ナビ」のカウンセラーもガイドを務めさせていただきます。どうぞご利用ください。
※参考:ラス・ハリス (著),「相手は変えられない ならば自分が変わればいい: マインドフルネスと心理療法ACTでひらく人間関係」 2019